『選択的夫婦別室』
青&緑「私たち、結婚しましょう」
青と緑のカップルは婚姻届を提出し、夫婦になりました。
この国では、夫婦は必ず同じ部屋で過ごさなければなりません。どちらの部屋で過ごすか、青と緑は話し合いました。青は、9割以上の夫婦が男性の部屋で過ごすことを選ぶと言いました。言葉にはしていないものの、「だから当然自分の部屋で過ごすべきだ」と言いたいのでしょう。緑は、譲る気のない青の様子を見て、折れることにしました。
この夫婦は、青の部屋で過ごすことになりました。選ばれなかった部屋は、取り壊さなければなりません。緑の部屋は、すぐに取り壊されました。
緑は悲しくて泣きました。すると、こんな声が聞こえてきました。
—泣くな。取り壊すという法律なんだ。
緑「なんてひどい法律なんでしょう。取り壊すことに何の意味があるのか、私にはわかりません。私は本当は自分の部屋で過ごしたいのです。夫婦が別室で過ごすのは駄目なのでしょうか?」
―駄目だよ。そういう法律だから。
緑「それなら、別室で過ごしてもいいという法律に変えましょう」
―それは駄目だ。
緑「どうして?」
―同じ部屋で過ごすのが愛情だから。
緑「あなたにとってはそうなのですね。それなら、あなたは同じ部屋で過ごしてください。ただ、私は別室で過ごしても愛情はちゃんとあります。だから、部屋を取り壊されたくないです」
―それは駄目だ。
緑「どうして?」
―別室だと、家族の一体感が失われるから。
緑「あなたにとってはそうなのですね。それなら、あなたは同じ部屋で過ごしてください。ただ、私たち夫婦は別室で過ごしても家族の一体感が失われることはありません。だから、部屋を取り壊されたくないです」
―それは駄目だ。
緑「どうして?」
―両親が別室で過ごすと、子どもがいじめられるから。
緑「あなたは両親が別室で過ごしている子どもをいじめるのですか? 私はいじめませんよ」
―・・・・・・。
緑「ところで、あなたは誰ですか? 青の親戚ですか?」
青「赤の他人だよ」
☆
ではまた!
きゅうり(矢野友理)